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更新日 2017-12-22

情報市場の実態と狙い目

第2回 情報市場の特殊性 その2

株式会社リーディング・イノベーション


2)ネットワーク産業の経済的特徴

 需要側の観点からの特性について、まとめてみます。
 ネットワーク産業の需要側から見た特性としては、ネットワーク外部性、スイッチングコスト、ロックイン効果の3つの存在が挙げられています。

 ネットワーク外部性は、直接的ネットワーク外部性と間接的ネットワーク外部性の2つに分けることができ、直接的ネットワーク外部性とは、第三者の消費動向が自己のネットワーク利用から得られる効用に影響を与える情況を指しています。たとえば、電話サービスの場合、加入者が多いほど通話の相手先が増加し、加入者の効用は増す。このようにネットワーク加入者の増加が、ネットワーク加入から得られる効用を増加させる現象が直接的ネットワーク外部性です。

 一方、ある商品やサービスの普及が、他の商品やサービスの価値を高める現象を間接的ネットワーク外部性です。この現象はビデオソフトとビデオデッキ、ハードウェアとしてのコンピュータとソフトウェアのように両者が補完的関係の場合に見られるものです。この時、直接的ネットワーク外部性と間接的ネットワーク外部性の双方から、独占的状態が強固なものとなるケースが想定されます。

 すなわち、ネットワーク外部性の存在は、いわゆる独り勝ちの現象につながる可能性を示唆しているのです。
 なお、ネットワーク外部性の考え方は、1980年代にはVHS/ベータの事例から技術標準普及の仕組みを説明する際に取り上げられ、1990年代にはニューエコノミーやIT革命が「ひとり勝ち」をもたらす背景理論として盛んに語られました。しかし、外部性の概念自体はアルフレッド・マーシャル(Alfred Marshall)、アーサー・C・ピグー(Arthur Cecil Pigou)の昔から議論されており、経済学者のハーヴェイ・ライベンシュタイン(Harvey Leibenstein)が1950年に示した「バンドワゴン効果(bandwagon effect)」は、実質的に ネットワーク外部性と同じものだと言われています。なお、市場において独り勝ちの現象が発生する要因としては、スィッチングコストとロックインも挙げることができます。

 スィッチングコストとは、あるシステムから他のシステムに移行する際に発生する費用のことを指します。また、ロックインとは、いったん加入したネットワークに利用者が拘束される状況のことをいます。インターネットメールをしている場合、メールアドレスを変更したいという欲求があったとしても、変更後のアドレスをこれまでの相手先すべてに知らせなくてはならず、そのための手間を考えると変更するという欲求が消え失せ、元のメールアドレスを使い続けるという行動につながります。このような現象がロックインです。

 ロックインが生じる要因は、いくつかに分類することができますが、主たるものとして、
①契約に起因するもの、
②特有の学習を必要とするもの、
③これまでに蓄積された情報や資産の有無が関係するものが挙げられます。

 ①の契約に起因するロックインとは、サービスを一定期間以上利用する場合に料金割引を適用、または、途中解約時に一定の補償金を請求するという契約がその一例です。
  ②は、システムの利用に一定の訓練が必要であり、他のシステムに移行する際に新たな訓練が再度必要になるというケースです。この場合、移行する際の費用を考慮して、たとえ他のシステムが現行システムよりも優れたものであっても、現行システムが維持されることになります。
 ③は、あるOSやアプリケーションソフトェアで作成されたデータが、別のシステムに移行する際に、利用できなくなるケースやデータ変換のための追加的費用が発生するケースが挙げられます。

 なお、ネットワーク外部性、スイッチングコスト、ロックインについては、公正取引委員会競争政策研究センターが研究を行っており、最近の報告では「ネットワーク外部性とスイッチングコストの経済分析」(競争政策研究センター共同研究、2005年11月)があり、その中でも、PCのOSについてその研究結果がまとめられていて、先の3つの特性の存在が論じられています。

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