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更新日 2017-12-22

情報市場の実態と狙い目

第1回 情報市場の特殊性 その1

株式会社リーディング・イノベーション


 情報市場は、他の商品やサービスとは異なった特殊性を有していて、競争環境等の背景を考察するためにも、この特殊性を理解することは極めて重要なことです。「情報産業の統合化とモジュール化」(大妻女子大学助教授浅井澄子)の中では、情報市場の特殊性を、「情報という無形資産の経済的特性とネットワーク産業の経済的特性」とに分けて論じられています。以下に、この文献を中心に情報市場の特殊性をまとめました。

1)情報の経済的特性

 情報の経済的特性として第1に挙げられるものは、情報の育成費用と再生費用との乖離が大きいことがあります。
 コンピュータのソフトウェアを作成するには、多大な人件費と時間を要しますが、いったん制作されたソフトウェアを複製する費用は、コンパクト・ディスク (CD)の費用程度で、最初の情報育成費用と比較するとゼロに近くなります。さらにデジタル処理された情報では、元になる情報と複製された情報の間には品質の差はないという特性を持っています。

 第2の特性としては、情報の価値が自己の情報保有量だけではなく、他の主体の情報保有に依存することがあります。すなわち、情報の保有側から受け手側に伝達した時点で、その価値はゼロに近いものになってしまうのです。

 第3の特性は、情報の取引に関して返還ができないということです。あるいは、取引対象としての情報の返還が意味をなさないということです。
通常の商品やサービスであれば購入後の一定期間内に契約を取り消すことは可能です。

しかし、対価を払って入手した情報内容を閲覧した後に、支払った価格以下であることを理由に、取引前の状況に戻すことを主張することは現実的に無理があります。これは、第2の特性と連動していることです。以上が、情報に関する経済的特性ですが、この特性により、次のような現象が起こりやすくなります。

 まず、第1の特性である情報の育成費用と複製費用との格差は、生産面における規模の経済性が発生する可能性を示唆しています。すなわち、販売量が多くなるに連れ、利益率は飛躍的に増大するということです。
 また、この第1特性は、不正コピーを引き起こす可能性も示唆していますが、不正コピーという行為は、第2の特性である情報の価値が受けて側に伝達した時点で価値がゼロになるということとつながることによって、情報の提供側に大きな経済的打撃を与えるという現象を引き起こすことになります。すなわち、デジタル情報における不正コピーは、経済的に大きな問題を引き起こすことにつながるのです。

 また、第3の特性である情報の取引に関して返還ができないという特性は、購入者は販売者に対する評判や知名度を考慮するという購買行動につながりやすい。そのため、販売量の増加は認知度を高め、これが販売量の一層の増加と平均費用の低下へとつながり、このことにより競争上の優位性を確立することとなります。
このような情報の特性は、市場の集中度を高める要因にもなり得るのです。

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