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更新日 2017-12-22

もっと身近にスピンオフ 〜スピンオフの実践的解説〜

第5回「スピンオフの不安要因その2−人事的処遇・条件」

株式会社リーディング・イノベーション
芦沢誉三(あしざわ よしぞう)


 前回より、スピンオフの不安要因について解説していますが、今回は「人事的 処遇・条件」についてです。

 スピンオフによって人事的問題が出る人達は、「親元企業を退社しスピンオフ 企業に参加する人達」と「親元企業は退社せずにスピンオフ企業に参加する人達」 です。

 退社してスピンオフ企業に参加する人達は基本的に別の会社に転籍するため、 親元企業とは別の人事制度が可能となります。スピンオフにおいての特徴的な制 度としては、一般には、設立時に資本金を出資し創業時の株を取得する、あるい はストックオプションを取得するなど、将来、大きなインセンティブが得られる 仕組みをつくることができることがあります。しかし、親元企業の考え方によっ ては、インセンティブの大きさが変わることが予想されます。

 親元企業としては、リスクを負って挑戦する者に対し新たなインセンティブを 与えたいとの考えはあるものの、残っている従業員から見て不公平に感じられな いような落とし所を考える必要があります。そのため、どのようなレベルでイン センティブを与えるかは、大変微妙な問題となります。

 実は、スピンオフベンチャーが残念ながら成功しなかった場合には、このこと は特に問題とはなりません。しかし、順調に拡大し、大きなインセンティブがス ピンオフベンチャー関係者に入った時には、感情面も含め問題が出てきます。

 一方、「親元企業は退社せずにスピンオフ企業に参加する人達」は、一般に出 向という形態でスピンオフベンチャーに参加します。この場合は、いずれ、親元 企業に戻るのか、あるいは親元企業を退社してスピンオフベンチャーに参加する かという選択の場面が訪れることになります。

 スピンオフベンチャーが順調に収益を上げ、拡大傾向をたどるということにな れば、転籍を選択することに大きな迷いはないと思われます。これまでのスピン オフの例を見ても転籍を希望する人が多くなっています。ところが、スピンオフ ベンチャーが成功しない場合には、親元企業へ戻る時のポジションの問題が出て きます。すなわち、親元企業を退社せずにスピンオフベンチャーに参加した人達 は、スピンオフベンチャーが成功しなかった時に問題が起きやすいことになりま す。

 このように、スピンオフでは、成功しても成功しなくても、どちらかに問題が 発生しやすいという複雑な状況が存在しています。そのため、これらの特性を考 慮して、スピンオフベンチャーのスキームを事前につくっていくことが大切とな ります。

 人の感情と行動を予測することは極めて難しいことです。スピンオフに関して の事例情報を多く研究する、あるいは研究している機関との共同でスキームをつ くっていくなど、事前の検討が大切となるでしょう。

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